*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
薄暗く湿っぽい洞窟の中の地下牢は、どうしても居心地が悪く、できることなら一刻も早く出たかった。






(………檀弓たちが白縫山に帰って、その報告を受けたら、きっと群雲や灯が俺たちを探しに来てくれるはずだけど。



でもまさか、青羽山の盗賊たちの住処の地下牢に幽閉されてるなんて、思いもしないだろうな………)






聡耳の黒松がいろいろと聞き込みをすれば、いつかはここが分かるかもしれないが。




しかし、それには随分な時間がかかるだろう。





(…………こんな所でぼうっとしていたら、どこに売り払われてしまうか分かったものじゃない。



なんとか、自力で出られる方法はないだろうか)






汀はどう見ても逃げる方策を練っているようには思えなかったし、自分がなんとかしなければ、と藤波は焦りを覚えていた。






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