*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
*
「ねぇ、蘇芳丸」
「……………」
「ねぇねぇ、蘇芳丸」
「……………」
「ねぇってば〜〜」
「……………」
頑なに顔を背ける灯に、汀はじりじりとにじり寄った。
「蘇芳丸! なんで無視するの!?」
汀が不服そうに言うが、灯は険しい表情のままだんまりを決め込んでいた。
(………あぁ、なんだか、初めの頃に戻ったみたい………)
そう思うと、なんだか汀は嬉しくなってきた。
「…………ふふふ」
不気味な笑い声を洩らした汀が、がばっと灯に抱きついた。
「〜〜〜〜〜お前っ!!」
灯は額に青筋を立てて、汀の頭をつかんだ。
「この流れで、なぜ抱きつく!?」
「だって、なんだか、懐かしくって、嬉しくなっちゃったんだもの!!」
「はぁっ!? 阿呆か!!」