*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
勝手に牢から出ることも考えてみたが、汀と藤波が床に穴を掘って格子を外していたので、今は横棒で補強されてしまっていた。






(まぁ、力づくで壊して出られないこともないが。



あんまり事を荒立てるのも得策ではないよな………)






なにせ、汀連れなのである。



下手なことをすれば、いつも通り面倒なことをしでかすに決まっている。






(あぁ、つくづく、とんだお荷物を抱え込んでしまった………)






そのとき、灯の鋭敏な耳が、ひっそりと近づいてくる足音をとらえた。





(………女の足音だな)





そう考えて、灯は眉を軽く寄せた。




青羽山に来て以来、汀以外の女の姿など、見かけたこともなかった。





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