*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「…………失礼いたします」





小さく控えめな声が聞こえて、灯は目を上げた。




汀は何も気づかずに眠りこけている。






「……………」






灯が無言で応えると、女がゆっくりと瞬きをしてから口を開いた。






「私は、この青羽山に住む、白鷺という者です」





「……………」





「あなた方をお放しするために、参りました」





「…………え?」






意味が分からず、灯は怪訝な顔をした。




白鷺は顔色も変えず、静かな声で続ける。






「あなたは、このままでは、息吹に命を奪われてしまうかもしれません」






「……………」








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