*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「ーーーーーんぅ」






汀は小さく唸ったものの、やはり起きる気配はない。




灯は眉をしかめ、髪を放すと、その手を汀の顔のあたりにもってきた。





そして、微塵の躊躇いもなく、安らかな寝息を立てている鼻をぎゅっと摘まむ。







「きゃっ!?」







汀がぱちくりと目を見開き、がばっと飛び起きた。







「……………なっ。


い、いきなりなんなの!?」







寝ぼけ眼であたりをきょろきょろと見回す汀を見て、灯はにやりと笑った。





連日、汀の無茶苦茶ないたずらで起こされていた鬱憤を晴らすことができ、満足なのである。






「あっ? あなたは………白鷺さん」






格子の向こうで静かに佇んでいる女性を見て、汀がにっこりと笑った。







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