*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「この人が俺たちを出してくれるそうだ」





「え? あら、そうなの?」






汀は目を丸くして白鷺を見上げたが、静かに見つめ返してくる白い相貌を見てこくりと頷いた。






「よく分からないけど、助けてくれるって言うなら、お言葉に甘えちゃおうかしら」





「ええ、そうしてください。今、錠を外しますから」






白鷺は格子にとりつけられた錠を外し、扉を開けて二人を外に出した。






「白鷺さん、ありがとう。


でもあなた、こんなことしたのがばれたら、大変なんじゃない?」






「………大丈夫です。


まさか私がそんなことをするなんて、誰も思わないでしょうから」






白鷺は自嘲するように、微かに口許を歪めた。




そんな複雑な表情を、汀は首を傾げて見つめていた。







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