*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
さらさらと流れる水の音が聞こえてきた。




そこは、青羽山の盗賊たちが水を汲みにくる川だった。





灯は手振りで汀と白鷺を止めると、手近な大木の太い幹に身を隠し、川のほうを窺う。






水際に二人の人影。




一人はしゃがみ込み、もう一人はそこ隣に立っていた。






「ーーーーーおい、少年。


水汲みは終わったのか?」






聞こえてきたのは、息吹の声だった。





水を汲んでいる藤波を、威丈高に見下ろしている。







「うるっさいなぁ、見たら分かるだろ。


まだ終わってない!」






「ふん、仕事の遅い奴だ」






「はぁっ!?


こんな大量の水甕やら竹筒やら渡されてんだぞ!!


そんなに早く汲めるわけないだろ!?」







藤波が苛々したように息吹を見上げる。







「…………なにやってんだ、藤波のやつ」







灯は小さく唸った。






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