*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「誰も戻って来なかったって………やばいんじゃないの?」






藤波は眉根を寄せて汀を見下ろした。




汀もこくこくと頷き、「こわいわねぇ」と答える。






(………こんな話を聞けば、この阿呆もさすがに行くのをやめるだろう)





そう思って、灯は白鷺に感謝の視線を送った。





しかし。






「ほんと、こわいわねぇ。


気をつけて行きましょうね、蘇芳丸、藤波ちゃん!」






「…………………」






灯と藤波は目を細めて顔を見合わせた。






「………あの、さ。


灯………俺は一緒に行かずに、都に戻ったほうがよくない?」






「あ? 何を言い出す」






微かに目を瞠った灯を見上げて、藤波は慌てたように言葉をつなぐ。






「いや、だからさ………群雲たち、灯と一緒に都に来てるんだろ?



だったら俺、ひとあし先に都に戻って、現況報告しとくよ。


群雲たち、心配してるだろうし………」







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