*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
汀の耳にも、涼やかな水の音が聞こえるようになってきた。






「そろそろかしら」




「そうだな、もう見えてくる頃だろう」







穏やかな風に吹かれて、頭上の梢がさらさらと音を立てた。




木洩れ陽が、鮮やかな新緑の間から降ってくる。





こぽこぽと水の湧く音が、樹々の間をこだまする。









ーーーーー降り注ぐ陽の光の中に、泉はあった。





白く煌めく陽射しを、揺れる水面にきらきらと跳ね返らせる、澄みきった青。








「ーーーーーまぁ。


なんてきれいな泉…………」







汀はうっとりとしたように、どこまでも深く続きそうな透明の青を見つめた。





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