*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
汀は肘のあたりまで水中に引き込まれながら、必死に顔を上げて口をぱくぱくしている。




青瑞の姫に何か語りかけているようだ。





しかし、周囲で蠢く樹々のざわめく音や、吹きすさぶ風のせいで、その言葉は灯の耳でも聞き取れなかった。






(…………あいつはまたっ!!


何を呑気にーーーっ)






見ている間にも少しずつ体勢が崩れていく汀に、灯は焦りを隠せない。





しかし目の前に、他の火の粉が降りかかっている。






「………くそっ、火影童子めっ!


ちょこまかしやがって………観念しろ!」






息吹は姿勢を立て直して灯に向き直り、刀を構えた。






「はぁぁーーーっ!!」





「……………くっ!!」






灯はよろめきながらも、一歩下げた後ろ足でなんとか踏みとどまる。







< 235 / 340 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop