*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
心地よい速さで駆ける栗野の背で、汀は風に黒髪を揺らしながら、ふふふと笑い声を洩らす。






「………楽しいわねぇ、馬乗りって。


私、上手く乗りこなせるように練習しなきゃあ」






「……………」





「ね、蘇芳丸、教えてくれるでしょ?」






「…………断る」






「あらっ、じゃぁ、独学でやらなきゃ」






「…………それだけはやめてくれ」







灯はぞっとしたように背中で答える。






「じゃ、教えてくれるわね?」





「……………」






頑なに答えない灯に、汀はくすりと笑う。





そして、腕にぎゅうっと力を込めて灯にしがみついた。






その手が、さわさわと灯の腹部を撫でている。






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