*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
二人は驚愕の表情のまま、顔を見合わせた。




汀はわなわなと唇まで震わせている。



その口許をゆっくりと両手で覆い、絞り出すように呟く。







「………藤波くん……いえ、藤波ちゃんって、女の子だったのね………」









「……………はぁあ??」







汀の呆然としたような呟きを聞いて、卯花は裏返った声を上げた。




あまりにも訳の分からない発言に、ついていけなかったのである。






しかし汀はそれに気づかず、言葉を続ける。








「そんな……まさか………。



私、てっきり男の子だと思っていて。


藤波くん、なんて呼んじゃって、傷つけたんじゃないかしら?



あぁ、どうしましょう、なんて言えばいいのか………。


とにかく、早く謝らなきゃ!!」







「………えっ!?


ちょ、ちょっと、汀さん!?」







止めようとする卯花の手をすり抜けて、汀はぱたぱたと駆けていってしまった。







< 50 / 340 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop