*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「ーーーーー藤波ちゃんっ!!」





謎すぎる呼びかけを受けて、あまりの気持ち悪さに、藤波はぞくりと全身の肌を粟立たせた。







(………なっ、なんだ、今のは!?



幻聴か!? 幻聴であってくれ!!)







祈るような気持ちでおそるおそる振り向くと、そこには泣きそうな表情をした汀が立ち竦んでいた。







「………っ、藤波ちゃん………」





「…………っ!!」







藤波の背筋が凍りついた。




蒼白な顔で見上げてくる汀を、冷や汗を垂らしながら無言で見下ろす。





「…………今まで、本当にごめんね、藤波ちゃん。



私、てっきりあなたはお、おと、男の子だと思っていたの!」






「…………はぁっ!?」






予想外すぎる展開に、藤波の声はひっくり返った。





汀はふるふると唇を震わせながら、浅葱の瞳に涙を湛えて藤波に謝りつづける。






「………私、深く考えもせずに、あなたのこと、藤波くん、なんて呼んじゃって。



ねぇ、とっても傷ついていたんでしょ?


それならそうと、言ってくれればすぐに改めたのに…………」






「………なっ、さっきから、いったい何を言ってるのさ!?」







藤波は極度の困惑で、それしか言えない。







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