*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
さっきの小柄な男が向かって行った方向へ、藤波は走る。





しばらく行ったところで、頭巾を巻いた頭が見えてきた。






「ーーーーー汀!!」






周りの目も気にせず叫ぶと、頭巾がすぐに振り返った。






「あらっ、藤波ちゃん!!」





「…………ちゃん、じゃないっ!!」






藤波は眉を怒らせて近づいた。




近くで見ると、汀は訳のわからない格好をしていた。






「…………なんで、男物、着てるわけ?」





訊ねると、汀は立てた人差し指を唇に当てて、静かにするよう身振りをした。





「私、今日は男なの!!」





「……………は?」






訝しげに首を捻った藤波が、汀の目をじっと見る。





すると、頭巾の中に隠された髪が一筋、ほろりと汀のこめかみに垂れてきた。





その髪はなぜか、真っ赤だった。







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