*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
その声を聞いて、さすがに人々は色めき立った。





「えっ!? あれが、賞金首の赤毛?」




「あんなに若くてちっこい男が!?」




「赤毛といえば、白縫山の火影童子のことなんじゃ………」





火影童子、の名が出ると、汀は顔中に焦燥を浮かべた。




またもや、ちらりと藤波を見て、合図を送る。




藤波は眉を顰めて、また息を吸い込む。





「あれーーーっ!?



あいつは火影童子じゃないぞ!?


姿が全然ちがう!!



火影童子はもっと背が高くて、顔の彫りが深いはずだ!!」






これも、汀から指示を受けていた内容だった。






人々は「そうなの?」と顔を見合わせた。




汀はそれに満足し、さらに念を押しておくことにした。






「みなさーん!!



私こそが、内裏に入った盗賊よ!!


この赤毛は、もちろん地毛よ!!



あっ、私の住処は、都の西の白縫山なんかじゃなくって、東のほうだからねー!!」






そんなことを叫びながら、都の東の山へ向かって駆け出した汀を、藤波と人々がぽかんとして見送った。






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