*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
変装した汀を実際に見た人々は、あまりにも珍奇な姿に、本気にはしていなかった。





しかし、その面白話を家族や知人に話して聞かせているうちに、いつの間にか尾ひれがついていった。





そうして、今や、賞金首の男は青羽山の盗賊だ、というのが定説のようになっていた。






汀と藤波は、数日のあいだ華月京にとどまった。





都の東側に出没しては、「私が賞金首よ! 東に住んでいるからね!」と名乗りをあげまくった汀は、噂が広まっていることに満足していた。






「藤波ちゃん、やったわ!!


あなたの協力のおかげで、蘇芳丸への疑いは見事に晴れたわよ!!」






「…………まぁ、疑いじゃなくて、事実なんだけどね。



それにしても汀、そろそろ、その呼び方、やめてくれないかなぁ」






嫌そうな顔でそう言った藤波に、汀がにっこりと笑いかける。






「あらっ! ごめんなさいね。



なんだか、藤波ちゃん、のほうが呼びやすくって。



気をつけるわね!!」






「…………あんまり期待してないけどね」






藤波は疲れたように項垂れた。







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