*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
(…………村のほうは、どうなってるんだろう)





と藤波は思いを巡らせる。




無断で勝手に姿を消した汀と藤波を、みんな必死で探しているのだろうか。





都は広く、その中で、どこにいるかも分からない人間を探すというのは、かなり骨が折れるだろう。





自分たちを探しながら、烈火のごとく怒り狂う檀弓と、氷水のごとく静かに怒る灯の顔が思い浮かび、藤波は何度目かも分からない溜め息を、また洩らすのだった。






「藤波ちゃ………くん。



そろそろ、白縫山に戻りましょうか」





「…………あぁ、そうだね」





「…………?」






なぜか嫌そうにゆっくりと首を縦に振った藤波を、汀は訝し気に見上げた。







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