*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
男は驚いたように眉を上げ、声の主を見下ろした。




男の頭の上で束ねられた長い直毛の黒髪が、その動きに合わせて揺れた。






「…………なんだ、急に?」






落とした視線の先には、ごわごわとした作り物くさい赤髪に、ぶかぶかの男物を着込んだ、奇天烈な格好の人物がいた。





(………なんだ、このちっこいのは)





男は怪訝な表情でまじまじと見つめる。




下から男を見上げてくるその人物は、ちょっと見たことがないほど奇妙で不格好な姿をしていたが。




しかし、きらきらと煌めく大きな瞳は、人里離れた山奥の泉のように青く、透明に澄みきっている。





抜けるように色の白い、小さな顔の造作は、はっとするほどに整っていた。





その美しさに息を呑んだ後、男ははたと気がついた。





「…………ん? 赤毛の………男?」






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