＊華月譚＊花ノ章 青羽山の青瑞の姫

（あらまぁ。きれいな男の人）





汀は目の前の男を、目を瞠って見つめる。





束ねた長い黒髪を、ゆらりと風に揺らしている男の顔は。




すっきりと整った目鼻立ち。


長く濃い睫毛。


どこか憂いを帯びたような黒瞳がちの、切れ長の双眸。


きめの細かな肌に、紅い唇、細い輪郭。





ーーーまるで妙齢の女性のような、やけに見目麗しい男だった。






その男が、麗しい顔をかすかに歪めて、汀を見下ろしている。





そして、形の良い唇が、うっすらと開かれた。





「…………あんたの、住処は？」





小さな問いに、汀は反射的に、ここ数日で言い慣れた言葉を返した。






「都の東、青羽山よ！」






その答えを聞いた瞬間に、男の大きな手が、むんずと汀の襟をつかんだ。






「……………えっ、えぇっ！？」






突然の出来事に、汀は目を丸くした。