*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫
「………噂をすれば影、とはこの事だな。



どうやらお前が、俺たち青羽山の盗賊を騙っている犯人らしいな」






「……………んまぁっ!!」






にやりと笑みを浮かべた男の言葉に、やっとのことで事態を悟った汀は、襟を掴まれたまま目を白黒させた。





(………まさか、青羽山に、本当に盗賊がいたなんて!!


しかも、この男の人が………)






口許を手で覆って硬直している汀の顔を、男が覗き込んでくる。






「………お前、なんとも不思議な瞳をしているなぁ。


しかも、この嘘くさい赤髪」






「………えーと、あの、これはね………」






男にじろじろと見つめられながら、汀は何と言い逃れしようかと考えを巡らせる。




しかし男は、言い訳を聞く気など毛頭ない。





企みありげな笑みで汀を見下ろし、にやりと呟いた。






「お前は赤毛の男か、それとも、青目の女か?



………どちらにせよ、金になるのは間違いないようだな………」







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