「「言えない」」
学校に着くなりトイレに
駆け込む妃吏を横目に
ため息一つ
「あ、クラス見忘れた。」
誰もいない廊下にスッと馴染む声
あれ程楽しみにしていたのに
人集りを気にすることなく
トイレに直行してしまった
後方からきゃっきゃっと
女子の甲高い声が
それと同時に
叫び混じりの男子の声も聞こえる
うるさいのは嫌いだ
とは言うものの、
クラス発表となるとこれくらい当然か、
などと思ってしまう
賑やかなのは嫌いではない
むしろ好きなくらいだ
...どの道、
わいわいする性格ではないのだが
"ホントは皆と混ざって楽しくやりたい"
妃吏にすら言えない私の想い。
らしくないなー...
気がつくとため息が漏れていた
階段から誰かが降りてくる
不意に上を見上げると
「遊月ー、クラス発表見たー?」
と、どこからか能天気な声が
束本(つかもと)だ。
「見てない。」
不機嫌なのが
見て取れるであろう態度で返す
「そっか〜。この調子だと妃吏はまたトイレかな(笑)まぁ人が少ないうちに見に行きなよ〜♡んじゃね〜」
ひらひらと手を振りながら
軽快な足取りで去って行った
何か良い事でもあったのだろうか
身長の高いすらりとした彼女は
学年1のモデル体型
誰がどこから見てもわかるような
そんなオーラを持っている
静かそうに見えて騒がしい奴
一言で言えばこんな感じだ
「クラス、一緒だといいな」
気がつくと声に出していた
顔に赤みがさすのがわかる
確認するかのように声に出す自分
恥ずかしい事なんて一つもないのに
でもどこか嬉しくて
そうだ
彼女もまた、私の大切な友達なんだ。