「「言えない」」
束本と別れて数秒
「ごめんね~待たせちゃって~」
笑混じりの妃吏らしい声が廊下に響いた
「遅い。なにやってたの。」
はぁ。とため息をつき
振り向くとそこには
茹で上がったように真っ赤な顔の
妃吏の姿があった。
「ちょっと今日具合悪いかも...えへへ」
顔は笑っていた、けど
「目は笑ってないよ。」
彼女の声を遮るように放った一声
戸惑う彼女の手を引く私
保健室に連れて行かなくては。
もっと早く気づいてあげられれば...
危うく口に出しそうになった
悪いことなど何もしていない
なのに
罪悪感に苛まれている
なぜ?
彼女のためにゆっくり歩く
「遊月~大袈裟だよ~」
そんなことを言いながらも
苦しそうに咳き込む彼女。
歩幅も合わせ背中を摩る、
「あと少しだから。」
頑張って、そう続けようとした
だけど、言えない
言ってあげられない
素直になんて、なれない
ごめんね