箱入り結婚のススメ

「私、室賀さんの彼女になりたいです」

「ゴホッ」


私が白身魚にナイフを入れながら思いきって口にすると、彼は口を抑えてむせている。
そのまま手で「待って」と合図した彼は、一生懸命シチューを飲み込んだ。


「失礼。って、不意打ちすぎるよ」

「ごめんなさい」

「いや……すごくうれしい」


緊張が一気にほぐれた。


「うれしすぎて……もうシチュー、全部あげる」

「そんなに食べられないです」


なんだか慌てている室賀さんの様子がとてもおかしい。
だけど、私もとてもうれしかった。


「よろしくお願いします」

「こちらこそ。大切にする」


さらっと照れるような言葉を言われたけど、室賀さんなら本当に大切にしてくれる気がする。

初めての恋人が室賀さんでよかったと思う。
麻子の言うように、彼はきっと真剣に付き合いを考えてくれているから。
そうでなければ、麻子の名前を使って、ずっと会えばいいのだ。

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