箱入り結婚のススメ

「私……室賀さんにそう言ってもらえて、すごく……」


うれしいです。と言いたかったのに言えなかったのは、思わず溢れた涙を慌てて拭ったからだ。

イヤだ、私。
泣くところじゃないのに。

だけど、それくらいうれしかったのだ。


「やっぱり。思った通りの人だ」

私の頬に伸びてきた彼の手が、優しく涙を拭っていく。


「すごく、幸せだな。舞さんがこうしてここにいてくれて」

私の代わりに彼がすべてを口にしてくれた。
そう。彼がいてくれて、とても幸せだ。


「冷めるから、食べようか」

彼は私にフォークを握らせながらそう言った。


彼が分けてくれたシチューのお肉は、本当に柔らかかった。
もっと有名なお店のシチューだって食べたことはあるけれど、それに少しも負けてはいない。
こんなに小さなお店で、こんなにおいしいものが食べられるなんて、意外だった。

< 102 / 450 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop