箱入り結婚のススメ
「私……室賀さんにそう言ってもらえて、すごく……」
うれしいです。と言いたかったのに言えなかったのは、思わず溢れた涙を慌てて拭ったからだ。
イヤだ、私。
泣くところじゃないのに。
だけど、それくらいうれしかったのだ。
「やっぱり。思った通りの人だ」
私の頬に伸びてきた彼の手が、優しく涙を拭っていく。
「すごく、幸せだな。舞さんがこうしてここにいてくれて」
私の代わりに彼がすべてを口にしてくれた。
そう。彼がいてくれて、とても幸せだ。
「冷めるから、食べようか」
彼は私にフォークを握らせながらそう言った。
彼が分けてくれたシチューのお肉は、本当に柔らかかった。
もっと有名なお店のシチューだって食べたことはあるけれど、それに少しも負けてはいない。
こんなに小さなお店で、こんなにおいしいものが食べられるなんて、意外だった。