箱入り結婚のススメ

「あのっ……」


そこまで気遣ってもらえたのだ。
それに、ずっと隠しておけない。


「実はあの後、園を辞めないのなら、結婚の見通しを示しなさいと言われ、お見合いを勧められて……」

「お見合い!」


室賀さんはフォークを置いた。


「それで、話せなかった訳だ」

私がコクンとうなずくと、室賀さんは大きな溜息をついた。
だけど、すぐに小さく頷いて、口を開いた。


「それは僕が阻止するよ」

「阻止?」

「そりゃ、大切な彼女が別の男とお見合いだなんて。全力で阻止しなくちゃ男が廃る」


『大切な彼女』という言葉がうれしい。
だけど、そんなことを言っている場合ではなくて……。


「今日は麻子さんと一緒だと言ってあるのだから、我慢するけど、今度はきちんと舞さんを家に迎えにいくよ」

「家に?」

「来週、また海外なんだ。だからその前に挨拶しておきたい」

「でも……」


父が怒り狂う姿が目に浮かんで、ためらわれる。

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