箱入り結婚のススメ
食事が済んでも、なんとなく立ち上がりたくなかった。
彼ともっと一緒にいたい。もっと彼を知りたい。
だけど……。
「舞さん、今日はこれで送るよ。
きちんと挨拶を済ませたら、もっとちゃんとしたデートしよう」
その心遣いもうれしかった。
今日のことでもしも信頼を失ったら、ますます認めてもらえなくなる。
彼は一度送り届けてくれただけなのに、スイスイと道を進む。
私が教えた裏道ですら、頭に完璧に入っていた。
「今日はここで。腕、お大事に」
「ありがとうございます。おやすみなさい」
「おやすみ。また、楽しみにしてる」
彼と『また』と言われると、気持ちが高鳴る。
本当に楽しい時間だったから。
室賀さんは私が家の玄関を入るまで、車から見送ってくれていた。