箱入り結婚のススメ
「お父様、私……実は、本当にお付き合いしている人がいます」
父と母の反応が怖くて、顔を伏せながらそう口にした。
だけど、なにも反応がない。
そっと顔を上げると……口をあんぐり開けて固まっている父と、キョトンとしている母が目に入った。
「お、お付き合いって、舞……」
お付き合いといっても、さっき恋人になったばかりだけど。
「この間言っていたことは、本当だったということか?」
「はい。結婚の見通しをということであれば、その方をご紹介します」
ここまできたら引き返せない。
私はきっぱりとそう言った。
「どういう、男なんだ」
「はい。麻子の紹介で知り合った方です。
まだほんの数回しかお話したこともありませんが、とても誠実な方で、結婚を前提にしてお付き合いしたいと言われています」
私に恋人がいるなんてこと、少しも予想していなかっただろう父と母は、困惑した表情を浮かべている。