箱入り結婚のススメ
「来週、海外出張の予定があるので、週末に挨拶に来たいとおっしゃっていて……」
父は納得がいかないような顔をしながらも、お見合い写真を閉じた。
「舞。挨拶に来たいというなら、一度会おう。
だけど、お前は社会に免疫がない。
どんな男か、じっくり見させてもらうよ」
「はい」
父も母も私のことを心配してくれているのはわかる。
それなりの生活を保障してもらいながら生きてきた私には、厳しい世界を知らない。
学校だって、ずっとエスカレーターで上がってきたから、受験戦争でもまれたという経験もない。
同じような境遇で育ってきた友達とは価値観が同じことも多く、穏やかに過ごしてきた。
だから麻子に箱入りと言われるわけだし、おっとりしているなんてよく言われる。
もしかしたら、男の人に騙される……ということだってあるのかもしれないのだ。
それでも、室賀さんは違うと思う。
それもまた、世間を知らない私が思い込んでいるだけだと言われればそれまでなのだけど。
ただ、恋愛の達人、麻子のお墨付きというのは心強い。