箱入り結婚のススメ
麻子、すごく驚くだろうな……。
初めてのデートから、両親に紹介というところまで一気に進んでしまったのだから。
「速水先生、出ますよ」
「はい」
運転手さんに呼ばれた私は、慌ててバスに駆け込んだ。
ケガをした左手が使えないのは、とても不自由だった。
だけど、普段子供のサポートをしている人達ばかりだから、こちらからなにも言わなくても、片手では難しいことにすぐに気がついてくれて、問題なく生活することができた。
特に、麻子と小栗先生にはお世話になった。
小栗先生はちょっとした力仕事や、泣いている子供を抱き上げる作業に困っていると、すぐに代わりをしてくれた。
同じ年中のクラス担当ということもあるのかもしれないけど、とても助かった。
「小栗先生、すみません」
「いえいえ。困ったときはお互い様です。普段、速水先生には助けていただいてますから」