箱入り結婚のススメ

「さてと」


麻子は獲物を捕まえたように、ニヤリと笑う。

カフェの飲み物の頼み方を教えてくれたもの、麻子だ。
未だに、メニュー表に書いてある通りのモノしか頼めなくて、麻子のように特別なトッピングなんてできないけれど。


「デートはどうだったの? 室賀さんに誘われたの?」


興味津々の麻子は、私の答えを急かす。


「うん。室賀さん、昨日代休だったみたいで、電話をくれたの。
ケガのことで、父や母になにか言われたんじゃないかって心配してくれて」

「ふーん。それで私と食事に行ったわけだ」

「うん。ごめん」


申し訳なくなってうつむくと、麻子は豪快に笑った。


「あはは。舞にしては上出来。
帰らないといけないからって断りそうだもん」

「室賀さんは送り届けててくれるって言ったんだけど……」

「え! それじゃあ舞から誘ったっの?」


私が室賀さんを誘ったことをひどく驚く麻子は、興奮気味に身を乗り出した。


「母に、麻子の名前を使って、ご飯を食べて帰るってメールして、それで……」


「恋の力は偉大だわ」なんてうなずいている麻子は、なんだかとてもうれしそうだ。
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