箱入り結婚のススメ

「舞さんが、うらやましいです」

「うらやましい?」


室賀さんが突然口にした一言に、父が不思議そうな顔をした。


「本当に大切に育てられているのだと、よくわかります。
実は私も、本当は舞さんに危ないことはしていただきたくないんです」


室賀さんは思いがけないことを口にした。


「ですが、自分のことを考えると……そういう経験も必要なのではないかと。
私も、それなりのやんちゃもしてきましたが、そういう経験から学んだこともあります。
失敗も多くしてきましたが、だからこそ、今の私があります」


思わず彼の顔に視線を送ったけれど、彼は父を真っ直ぐに見つめたまま、再び口を開く。


「舞さんが、このまましたいことをせずに生きていったら、後悔しないでしょうか。
私は失敗しつつも、自分の選んだ道に後悔はしておりません。
なぜなら、自分で決めたことだからです。
自分で決めたことだから、失敗しても仕方がない。また一から始めようと思えるんです」

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