箱入り結婚のススメ
室賀さんの言葉には、とても重みがあった。
そうかもしれない。
父と母に決められた道を歩いていって、もしも失敗したら……きっと私は、激しく後悔するだろう。
そして、父と母のことを恨むかもしれない。
そんなのイヤだ。
父は、室賀さんの言葉に、少し圧倒されているような気がする。
今まで我が家では、こんな風に父に意見をぶつけることはまれだったし、父も自分が正しいと信じていたのだと思う。
我が家に、新しい風が、吹いたのだ。
「確かに、君の言うように、舞にとっても大切な経験なのかもしれない。
今まではずっと閉鎖された環境の中で、なに不自由なく生きてきて、おそらくそれほど困ったこともなかっただろう。
しかし……」
父は言葉を濁した。
「舞さんが安心して働けるのは、やはり、お父様とお母様の後ろ楯があるからだと思います。
こんなに素敵なご家庭が」
室賀さんは、父と母を誉めることを忘れなかった。