箱入り結婚のススメ
父と母を決して否定せず、それでも私の気持ちも汲んでくれた室賀さんの話は、非の打ちどころがなかった。
父はどう思ったのだろう。
結局、はっきりとした意見を聞くまでには至らなかった。
「本日はお招きいただき、本当にありがとうございました」
室賀さんが立ち上がり、丁寧にあいさつをすると、父が彼を捕まえてそっとなにかを囁いたようだ。
彼は「わかりました。考えさせていただきます」と答えると、玄関に向かう。
玄関まで見送りに出た母に深く頭を下げた室賀さんと一緒に、私も外に見送りに出た。
「本当にありがとうございました。
あの……さっき、父がなにか?」
「うん。舞さんは一人娘だから、婿養子をと思っていると言われたよ」
「婿養子!?」
そんなことまで……。
確かに私は一人娘だけど、まさかそんな条件を付けられるなんて。
父や母のことを考えないわけではない。
だけど、そこまで室賀さんに求めるなんてこと、私にはできない。