箱入り結婚のススメ
初めての家出
「今日はありがとうございました」
リビングでニュースを見ていた父に頭を下げると、私の方に顔を向けた父は、「座りなさい」と呟いた。
緊張が走る。
父は渋々ながらも、室賀さんとの付き合いを認めてくれたのだと思った。
だけど、私の知らないところで"婿養子を"と室賀さんに言っていたのは、そうではないという証のように思えたのだ。
「舞」
「はい」
私と九十度の位置に座っている父は、テレビを消すと口を開いた。
「室賀君のことだが」
「……はい」
ピンと張りつめたような空気が緊張を誘う。
「舞は真剣なんだな」
「はい。いい加減なお付き合いではありません」
彼と過ごした時間は、まだほんのわずかだ。
だけど、十分に室賀さんが私のことを大切にしてくれているのはわかるし、私も彼を大切にしたいと思っている。