箱入り結婚のススメ

「清志君」


園庭の滑り台の影で膝を抱えていた清志君は、私の姿を確認すると、顔をこわばらせた。


「少し休憩しよっか」

「いいの?」


おそらく連れ戻されると思っていただろう清志君は、少し驚いている。


「うん、いいよ」


私は彼の隣に腰かけた。


「ここ、暖かいんだね」

「先生知らなかったの? ここ、風が来ないから暖かいんだよ」


そんな小さな発見を教えてもらうのも、コミュニケーションのひとつだ。


「知らなかったよ。清志君に教えてもらえて、先生ラッキーだなぁ」


清志君がやっと笑顔を見せた。


「清志君、偉いね」

「僕、偉いの? どうして?」


飛び出したのにどうして?と不思議がっている清志君は、私の顔を見つめた。


「だってさ、嫌だーって言えたじゃん」

「言っていいの?」

私は小さくうなずいた。

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