箱入り結婚のススメ

「ねぇ、その手袋かわいいね」

「うん。室賀さんが……」

「えっ! まさかプレゼントなの」

「うん。そう」


なんとなく照れくさくてうつむくと、麻子は私の右手首をつかんで上にあげた。


「いやー、幸せそうで。うふふ」


ギプスの巻いてある左手にも、白い包帯の先にボルドーの手袋。
なんとなく不恰好だけれど、それでもうれしいものはうれしい。


「思ったより早く終わったし、ご飯、行ける? 
しばらく衣装作りだから、ラストチャンスだし」

「うん。家に電話してみるね」


室賀さんが出張だということは父も母も承知している。
だから、変に勘繰られる心配もない。


私たちはお気に入りのレストランへと向かった。


「あー、寒かったね」


麻子はコートを脱ぐと隣の席に置いた。


「うんうん。園庭も寒くなってきた」


元気いっぱいの園児と遊ぶには体力がいる。
しかも、寒かろうが暑かろうが彼らには関係がない。

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