箱入り結婚のススメ
「私、料理教室で習ったキーマカレーが大好きなんです。
隠し味に生姜を入れるとおいしいんですよ」
「生姜なんてカレーに入れるの? でも食べてみたいなぁ」
「腕が治ったら、是非」
家族以外の人に料理を振る舞うなんて初めてだ。
だけど、最初の人が室賀さんでうれしい。
帰りの車の中で、「忘れてた」とつぶやいた彼は、後部座席に置いてあった小さな袋を私に差し出した。
「これは?」
「ニューヨークのお土産だよ。大したものじゃないけど」
「うわー、うれしいです。開けてもいいですか?」
小さく頷いた彼は、車を発進させた。
「キールズっていう店のスキンケアグッズなんだ。
僕はよくわからないから、商談の時に女の子へのお土産はなにがいいか聞いたら、ここがいいって言うんで。
舞さんは知ってるか」
わざわざ私のためにリサーチしてくれたんだ。
「いえ。聞いたことはありますが、使ったことはないんです。大切に使わせていただきます」
「喜んでもらえてうれしいよ」