箱入り結婚のススメ
全然気がつかなかった。
というか、あれから室賀さんがどうしてたかなんて気遣う余裕すらなかった。
「さ、とにかく片付けちゃおうか」
「うん」
私たちは大量の段ボールと格闘し始めた。
すべての片付けが終わったのは、それから二時間後のことだ。
園長先生の労いの言葉で、私達の業務は終わった。
「お疲れさまでした」
それぞれの先生が帰途につき始めると、小栗先生がやって来た。
「速水先生、あの……」
「はい」
「ちょっといいですか?」
突然呼び止められた私は、不思議そうに見ている麻子に目配せしながら、職員室を出た。
そのまま小栗先生についていくと、さくら組に入る。
なにかまだ仕事が残っているのだろうか。
「あの、さっきチラッと見かけたのですが、この間の方……」
『この間の』って、室賀さんのことだ。