箱入り結婚のススメ

全然気がつかなかった。
というか、あれから室賀さんがどうしてたかなんて気遣う余裕すらなかった。


「さ、とにかく片付けちゃおうか」

「うん」


私たちは大量の段ボールと格闘し始めた。

すべての片付けが終わったのは、それから二時間後のことだ。
園長先生の労いの言葉で、私達の業務は終わった。


「お疲れさまでした」


それぞれの先生が帰途につき始めると、小栗先生がやって来た。


「速水先生、あの……」

「はい」

「ちょっといいですか?」


突然呼び止められた私は、不思議そうに見ている麻子に目配せしながら、職員室を出た。
そのまま小栗先生についていくと、さくら組に入る。

なにかまだ仕事が残っているのだろうか。


「あの、さっきチラッと見かけたのですが、この間の方……」


『この間の』って、室賀さんのことだ。


< 220 / 450 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop