箱入り結婚のススメ
「どこに行こうか」
どこと言われても、デートなんて室賀さんとしかしたことがないからわからない。
「えっと……」
信号で車が止まったとき、室賀さんは前を見据えたまま溜息をついた。
「ごめん。ちょっとモヤモヤする。舞さんとゆっくり話したい」
「はい」
その方が良さそうだ。
小栗先生とはなにもないのだから。
「あのさ……」
再び車を発進させた彼は、なにか言いにくそうにしている。
「僕の部屋に行ってもいいかな。ふたりだけで話したい」
胸がドクンと跳ねた。
麻子に貸してもらったウーマンライフの記事が頭をよぎる。
そして、『男は皆性欲ってのがあるわけ。室賀さんがどんなに紳士でもよ』という麻子の言葉まで思い出してしまった。
「イヤならいいんだ」
「いえ……」
イヤ、というわけじゃない。
ただ、もしそうなったら、どうしていいのかわからない。
こんな事だったら、もっとウーマンライフを読んでおくべきだったとさえ思う。