箱入り結婚のススメ

「あっ、ごめん。下心はないから」

「えっ?」

「まぁ、ないと言ったら嘘だけど、舞さんの気持ちが追いつくまで待ってる」


私はこんなことばかりだ。
彼に気を遣わせて、待たせて……。
全部私の都合だ。


「ごめんなさい。私、麻子みたいになりたい」

「どうして?」


室賀さんは少し驚いたような声を上げる。


「私、ホントに色々な経験が少ないんだって、最近ようやく知りました。
それに室賀さんを付き合わせてばかりで」

「僕は舞さんが好きなんだよ」


ハンドルを握る室賀さんの横顔が、優しく笑った。

「……はい」

「若槻さんじゃない。それが恋ってものだ。好きな人のためにならなんでもするさ」


そう言ってもらえると気持ちが落ち着く。
だけど、それならなおさら、私だって彼のためになにかしたい。

室賀さんは私の方に一瞬視線を移して、再び前を向いた。


「そんなに悲痛な顔をされると、僕が性欲の塊みたいだ」


彼の発言があまりに予想外で、思わず噴き出した。

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