箱入り結婚のススメ
彼は駐車場に車を止めると、「どうぞ」と私を促す。
エントランスでカギを解除してエレベーターに乗ると、すぐに六階にたどり着いた。
「ここだよ」
彼は一番東の角まで行くと、ドアを開けて私を中に入れてくれる。
散らかってるかもしれないなんて言ってたくせに、玄関はとてもきれいに片付いていた。
「さ、入って」
「お邪魔します」
少し緊張しながら靴を脱いで整えると、彼について廊下を進んだ。
途中にあったドアがトイレや浴室なのかもしれない。
一番奥の扉を開けると、十畳くらいだろうか。ひとり暮らしにしては広めのリビングがあった。
「やっぱり」
彼は慌てて脱ぎ散らかしてあった洋服をまとめて、入ってきたばかりのドアから出て行った。
その間にぐるりと部屋を見渡したけど、その洋服以外はとてもきれいに片付いていて、テーブルの上に飲み残したコーヒーの入ったカップが置いてあったくらいだ。