箱入り結婚のススメ
「お待たせ。なにか飲む?」
「はい。それじゃあ、コーヒーで」
「了解」
リビングに戻ってきた彼は、テーブルのカップを持ってカウンター式になっているキッチンに入っていった。
「適当に座ってて」
リビングの端には、大きなダークブラウンのソファ。
皮張りのソファは、座り心地が最高だ。
「あっ、私やりましょうか?」
勧められて一度は座ったものの、なんだか落ち着かない。
「それじゃあ、手伝ってもらおうかな」
キッチンに入ると、「これ、お願い」とコーヒー豆を渡される。
彼とこうして肩を並べてキッチンに立つって新鮮だ。
「うーん。甘いお菓子がないな。あんまり食べないんだよ」
「コーヒーだけで十分です」
キッチンはとてもきれいに片付いていた。
あまり使った形跡もないような。