箱入り結婚のススメ
「舞って呼んでもいい?」
私はハッとして彼を見つめる。
麻子たちが呼び捨てで呼び合っているのを見て、うらやましいと思っていたことが彼にバレたのかと思った。
「あのっ、はい。もちろんです。というか、うれしいです」
『うれしい』は余計だったのかもしれない。
だけど、思わず口から出た。
「はぁ、よかった」
彼は「コーヒー、もう一杯どう?」なんて立ち上がる。
「私、やります」
「いや、このくらいはできるから。舞にはカレーをお願いする」
『舞』と呼ばれてうれしい反面、なんだか照れくさくて顔を伏せる。
「やっぱ、照れるな。舞も"室賀さん"はもうやめだよ」
「私も!?」
彼はキッチンでコーヒーを注ぎ始めた。
「お待たせ」と私の前にもカップを置いた彼は、「当然でしょ」とクスクス笑う。