箱入り結婚のススメ
腕のギプスがとれないせいで満足に料理もできない私は、結局彼の提案でリアンに行くことになった。
麻子とご飯を食べて帰ると母に言っておいた私は、連絡しなくてもいいと言ったけど、やっぱり彼は「きちんとしなくちゃ」とまた電話を入れてくれた。
「舞のお母さんが……」
電話を切った彼は、私を見つめてにっこり笑う。
「母が?」
「もういいよって。気を遣わなくても大丈夫だから、舞に普通の恋愛を教えてあげてって。
舞が前に言ってたように、お父さんとお母さんって、大恋愛して結ばれたような気がしてきたよ」
秀明さんは、スマホをテーブルに置いた。
「でも、俺は……」
彼が“俺”と言うたびにドキッとしてしまう。
いつもと違う彼に出会ったような気がするのだ。
「やっぱり舞のお父さんとお母さんには心配かけたくない。
もしかしたら、井出の言うように、周りから見たら堅苦しい付き合いに見えるかもしれない。
だけど、本人達がそれでよければ、いいだろう?」