箱入り結婚のススメ

彼の言うことはもっともだ。
家の事情を隠して付き合い始めたわけではないのだし。


「それに……キスさせて下さいなんて、ご両親に許可をもらうつもりは、ない」

「えっ……」


ハッと彼に視線を向けると、私の手からコーヒーを奪ってテーブルに置いた彼は、真っ直ぐ私を見つめる。

どうしよう。これって……。


「舞」

「……はい」

「好きだよ」


私の顎に手をかけた秀明さんが、ゆっくり近づいてくる。

どうしたらいいんだろう。
ウーマンライフになんて書いてあったっけ。
いや、キスのやり方なんて、読んだ記憶はない。


よくわからないけど、私はギュッと目を閉じた。

彼の鼻が私の鼻に触れて、きっとこのあと唇が触れるはずだ……と考えると、心臓が飛び出しそうになる。
だけど、なにもない。

それどころか、彼の気配が離れて行くのがわかった私は、そっと目を開けた。
< 240 / 450 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop