箱入り結婚のススメ
彼の言うことはもっともだ。
家の事情を隠して付き合い始めたわけではないのだし。
「それに……キスさせて下さいなんて、ご両親に許可をもらうつもりは、ない」
「えっ……」
ハッと彼に視線を向けると、私の手からコーヒーを奪ってテーブルに置いた彼は、真っ直ぐ私を見つめる。
どうしよう。これって……。
「舞」
「……はい」
「好きだよ」
私の顎に手をかけた秀明さんが、ゆっくり近づいてくる。
どうしたらいいんだろう。
ウーマンライフになんて書いてあったっけ。
いや、キスのやり方なんて、読んだ記憶はない。
よくわからないけど、私はギュッと目を閉じた。
彼の鼻が私の鼻に触れて、きっとこのあと唇が触れるはずだ……と考えると、心臓が飛び出しそうになる。
だけど、なにもない。
それどころか、彼の気配が離れて行くのがわかった私は、そっと目を開けた。