箱入り結婚のススメ

「ごめん」


秀明さんは気まずい顔をして私に謝る。


「舞の気持ちが追いつくのを待つなんて言ったくせに、舞にキスしたいと……思ってしまった」


「ふー」と溜息をついた彼は、椅子に体を預けて天井を見上げる。


『男は皆性欲ってのがあるわけ。室賀さんがどんなに紳士でもよ』という麻子の言葉を思い出して、少し考える。

今、私……彼とキスしたくなかったの? 

そんなことはない。
初めてだからどうしたらいいのかわからなかったけど、彼となら構わないと心のどこかで思っていた気がするのだ。


麻子はあの時、『素直になることよ。この人に抱かれたいと思ったら、抱かれればいい』とも言っていた。
それに、相手が秀明さんなら、きっと大丈夫だって。

抱かれる……というのは、私にはまだハードルが高すぎる。
だけど、キスなら……。

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