箱入り結婚のススメ

「でも、舞……」


秀明さんは驚いた声をあげたけど、それが本心だ。
そう伝える意味で、彼に一層ギュッとしがみつくと、「わかった」という声が聞こえた。


ドクンドクンと高鳴る鼓動が彼に聞こえてしまっているのではないかと思うほど、緊張がピークに達する。


秀明さんは私を離すと、肩に手を置いてゆっくり近づいてくる。
私は彼を見つめていることなんてとてもできずに、少しうつむいて目を閉じた。


唇に触れる柔らかい感覚。
それが離れた瞬間に、再び彼に抱き寄せられる。

これが私のファーストキス。


麻子に言わせれば、遅すぎる“初めて”かもしれない。
だけど、初めてのキスの相手が秀明さんでよかったと思う。


「好きだ、舞」


私を一旦離して、真っ直ぐな視線を送る秀明さんに、吸い寄せられそうだ。


「私……秀明さんの彼女になれて、すごく幸せです」


思いを言葉にするのは、とても勇気がいる。

だけど、彼には伝えたい。
彼が私にそうしてくれるように。

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