箱入り結婚のススメ
「ごちそうさまです」
食事のときはいつも、彼が会計をしてくれる。
私が出すと言っても、「男にかっこつけさせろって、ウーマンライフに書いてなかった?」なんて出させてはくれなかった。
私より六つ年上の彼は、大企業に勤めているということもあって、当然もらっている給料だって私よりずっと多い。
それに、「舞はちゃんと自分の給料でやりくりしているって、若槻さんに聞いたから」と受け取ろうとはしなかった。
それなら私は彼に料理を作ってお返ししようと、財布をバッグにしまった。
それから私達の交際は、とても順調だった。
ギプスがとれたときは、約束通り彼にカレーを振る舞って、すごく喜ばれた。
母も秀明さんを完全に認めてくれたようで、「デートに行ってきます」とためらいなく言えるようになった。