箱入り結婚のススメ
『もう、園は出たの?』
「はい。今、バス停に……あれっ?」
その時、少し前方に見慣れたBMWが停まった。
秀明さんの車だ。
「よかった。すれ違うかと思った」
すぐに車から降りてきた彼は、走り寄った私をギュッと抱き寄せてつぶやいた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
話したいことがたくさんあったのに、なんだか胸がいっぱいだ。
何度も何度も電話で会話を交わしていたとはいえ、やっぱりこうして抱きしめられるのとは違う。
「舞、お腹は?」
「すいてます。作りましようか?」
外食もいいけど、ふたりでゆっくり過ごしたい。
「それはうれしいな」
「オムライス、ですか?」
「あはは。ビンゴ」
長い出張の間は接待ばかりで、ごく普通の食べ物が食べたくなるという彼が、リアンでオムライスを食べていたことを思い出したのだ。