箱入り結婚のススメ
だけど、今日はいつものように遊びに来たわけではないのだ。
リビングに残してきた秀明さんのことが気になって、頭が真っ白になってしまう。
「ちょっと、舞。ボーッとしてないで、カップ出して」
「あっ、はい」
なんとか気持ちを落ち着けようとしたけれど、ドキドキが止まらない。
初めて秀明さんが来てくれた日を思い出してしまったから。
あの時のように、父がなにを言いだすのか全く予想できない。
今日のために、麻子が貸してくれた数年前のウーマンライフを読み込んだ。
結婚を特集した増刊号は、かなり読みごたえがあった。
もちろん、結婚の挨拶についても書かれていたけど、事前に両親に話しておくのが普通の様だ。
そうして顔合わせの日程を決めるという手順が多いようだけど、そうしなかったのは、もしかしたら秀明さんの心遣いなのかもしれない。
父がなにか言いそうなのは目に見えているから。
私ひとりにその大役を背負わせないように、と考えてくれた気がするのだ。